抄録
Offer Organization: 日本学術振興会, System Name: 科学研究費助成事業, Category: 挑戦的研究(萌芽), Fund Type: -, Overall Grant Amount: - (direct: 5000000, indirect: 1500000)
本課題では、イオン液体を素材とする、柔軟性を持つ低融点配位高分子の開発を目的とする。昨年度までに、イオン液体とシアノ系アニオンを含む塩の反応によって、一連のアニオン性配位高分子を合成し、これらの塩が比較的低温で分解融解挙動を示すことを明らかにした。本年度は、詳細な分光学的および熱力学的検討を行うことによって、この特徴的な融解現象の機構解明を進めた。ここでは、得られた物質のうち最も低融点であったイミダゾリウム系イオン液体含有物質を選び、高速熱測定、ラマン分光、およびX線回折を適用して、その融解凝固過程を詳細に検証した。第一に、分解融解後に生じる液相と固相の組成を分析し、この分解融解現象が、融点におけるイオン液体成分と塩の相分離に由来することを明らかにした。すなわち、この系で分解融解が生じるのは、イオン液体に対する溶解度が低い塩を含むことが原因であることがわかった。第二に、高速熱測定を用いて、冷却速度と結晶化度の相関を検証した。これらの物質を融解状態から冷却すると、通常の条件下では必ず不均一な固液混合物を生じたが、極めて早い冷却速度のもとではガラス化が起こることを見出した。このように、本系でアモルファス形成ができることを実証した。第三に、溶融物を冷却して生じた不均一混合物は、放置すると徐々に結晶性の向上を示したが、この過程では、イオン液体と固体成分の反応が常温で進み、元の配位高分子の多結晶が再構成されることがわかった。この結晶再構成は自己修復的な現象ともみなせ、イオン液体成分を含むことに由来する特徴的な現象である。