抄録
Offer Organization: 日本学術振興会, System Name: 科学研究費助成事業, Category: 一般研究(C), Fund Type: -, Overall Grant Amount: - (direct: 1800000, indirect: -)
自然界の情報処理メカニズムの中で、脳の知的情報処理と、構造の自己組織化は特に興味深い。後者は化合などに始まり、生体の組織化にも及び、増殖と進化の所産として前者を生み出したといえる。このメカニズムの解明は生命工学研究の一環として重要であるばかりでなく、現実に役立つ新しい情報処理方式の開発につながると考えられる。
ここでは、脳の情報処理に関する我々自身の研究成果を活用して、構造の自己組織化の一つのモデルを構築した。抽象的になり易いテーマなので、具体的なイメージを打ち出すため、ハードウェアの場を考えた。まず、モータ、車輪、バッテリ、光センサ、タッチセンサなどを内蔵する5種類多数の素子で構造体を作ったとき、構造に応じて多様な機能が現れるようにしておく。そして、自然に発生した(またはランダムに初期設定された)構造情報が交配と突然変異によって次々に変化していくとき、種々の構造体が発生するようなモデルを構成した。構造情報(システム記述と名付ける)とその発現機構は、なかなかロバスト(頑健)にならない。つまり、交配を繰り返すうちに、構造体を表現できなくなってしまう。これを、有用な中間構造体を表現する第1段のシステム記述、最終の構造体を表現する第2段のシステム記述にわける階層メカニズムによって回避した。この結果を国際学会 IEEE World Congress on Evolutionary Computationに発表した。その後改良を重ね、機能的な構造体を効率的に自己発生するモデルとすることができた。発生した構造体(ロボット)は、例えば、障害物をよける、光の下で回転し暗闇で止まる、走光性、背光性などの機能を持つ。構造体発生のロバスト性を求めた結果、必然的に生体の増殖メカニズムへの類似性が現れた点が、この種の情報処理の本質を示しており、重要である。