抄録
Offer Organization: 日本学術振興会, System Name: 科学研究費助成事業, Category: 基盤研究(B), Fund Type: -, Overall Grant Amount: - (direct: 13700000, indirect: 4110000)
本研究は,光受容タンパク質の視覚機能をデバイスレベルで取り入れた視覚受容野型の画像フィルターを作製し,アナログ画像処理に適用すること,および視覚プロセスを構成論的に明らかにすることを目的とする.本年度は,タンパク質懸濁液をバイオナノインクとしてインクジェット印刷し,網膜神経節細胞受容野および脳の第一視覚野に存在する単純細胞受容野形状を3次元的に模倣した「グレースケール(多値化)DOG / Gaborフィルター」を実現し,アナログ画像処理および錯視検出に適用した.特にGaborフィルターを用いて,代表的な方向錯視であるCafe Wall 錯視を実験的に検出し,心理学実験および計算機シミュレーションと比較した.Cafe wall画像上をフィルター走査するだけで得られる畳み込み画像には,物理的には平行であるモルタル線部に右下がり,右上がりを示すtwisted codeが出現した.さらに錯視の強さに関するGaborフィルターの空間周波数および方位依存性を検討したところ,標準画像の場合には,フィルター長:タイル長が 0.66 以下の場合,および方位0度の場合に錯視が強調されることがわかった.Cafe Wall 錯視は方向依存性のある現象のため,視覚系の方向エンコード機構に基づいて説明することは妥当であり,本結果は錯視の強さが向きや線の長さを検出する神経細胞を模倣したGaborフィルターのサイズ(空間周波数)に依存することを示唆している.人間の目のエッジ検出機能と方向検知機能をソフトウェアや複雑な回路,電源を使わずに生体膜の特性だけで再現することに成功した.