抄録
Offer Organization: 日本学術振興会, System Name: 科学研究費助成事業, Category: 基盤研究(B), Fund Type: -, Overall Grant Amount: - (direct: 13400000, indirect: 4020000)
脊髄損傷は、外的要因により運動・感覚をふくむ脊髄神経機能が障害される重篤な疾病である。以前より、損傷された中枢神経は再生しないとされてきたが、とくに、脊髄損傷後慢性期には、ミエリン由来軸索伸長阻害因子の産生、グリア瘢痕の形成などによる損傷部位での環境変化によりほとんどの神経再生治療は奏功しない。このため慢性期脊髄損傷では、後遺症を軽減するためのリハビリテーションが標準的な治療方法となっているのみである。我々研究グループは、多能性幹細胞、Muse(multilineage-differentiating stress-enduring)細胞を用いて、脊髄損傷に対する再生医療研究開発をすすめてきた。本研究課題では、Muse細胞を選択的に損傷脊髄内に集積させ、未だ根本治療の存在しない慢性期脊髄損傷に対し、応用可能な新規再生治療を開発することを目指している。本研究は、「慢性期脊髄損傷に対するMuse細胞による機能再建と障害抑制」という概念実証の確立を通じ、慢性中枢性疾患への新規治療開発への扉を開く研究と位置付けられている。
今年度、慢性期脊髄損傷モデルを確立し、これまで困難とされてきた慢性期脊髄損傷における神経再生治療をMuse細胞移植により確立することができた。さらに、慢性期脊髄における変化、Muse細胞投与後の変化を、ラットのBehavior、のみならず、免疫組織学的に、あるいはGene sequenceをもちいて、明らかにすることができた。さらに、慢性期脊髄損傷で問題となる脊髄損傷後に生じる痛みにおいて、慢性期の損傷脊髄にMuse細胞を届け、脊髄損傷部局所での軸索伸長にくわえ、活性化したグリア細胞抑制による抗炎症作用、神経保護作用が期待できることが明らかとなった。