抄録
Offer Organization: 日本学術振興会, System Name: 科学研究費助成事業, Category: 基盤研究(C), Fund Type: -, Overall Grant Amount: - (direct: 3600000, indirect: 1080000)
熟練度の違いにより生じるバイオリンの空間放射特性の違いを熟練度に応じたバイオリン音色の違いとして知覚できるのかを明らかにするために、42チャンネル球形スピーカにより熟練度別の空間放射特性を模擬した。バイオリンの種類に関わらず熟練者が演奏するバイオリン音には、400 Hz前後の下方向への放射指向性、1 kHz前後の正面方向への放射指向性、および3~4 kHz前後の上方向への放射指向性が強く表れることから、演奏者の周囲42ヶ所で録音した演奏音の各周波数におけるパワーバランスを変えることによって模擬的に3段階の熟練度を再現した。
次に、3D映像によるバイオリン演奏の支援を行うために、バイオリンの空間放射特性を可視化する方法について検討した。これまで、放射方向を明確化にするために、周波数ごとに42点の観測方位の中で最も低い音圧レベルを0 dBとして、そこからの差分を3D表示する方式を採用していた。しかし、この方式では演奏音の音圧レベルが低い場合であっても音が放射されているように見えることがあり、聴感上の音の強弱の感覚との齟齬が生じていた。そこで、最小音圧レベルからの差分をとった後に42方位の平均パワーを掛け合わせるという新たな可視化法を提案した。これにより、演奏支援のために放射指向性を可視化することと、聴感上の音の強弱の感覚との整合をとることの両方を実現することができた。
本課題の派生研究として、バイオリン研究のために構築した42チャンネル球状マイクロホンアレイを用いて発声の空間放射特性を調べた。その結果、800 kHz以下の低周波数成分は発声者の前方斜め下方向に放射されることや個人差が3 kHz以上に顕著に表れることが明らかとなった。音の空間分析は、バイオリン音だけでなく、発声の問題に関しても有効なアプローチ法となり得ることが示された。