抄録
Offer Organization: 日本学術振興会, System Name: 科学研究費助成事業, Category: 基盤研究(B), Fund Type: -, Overall Grant Amount: - (direct: 13300000, indirect: 3990000)
本年度は,研究課題である認知機能に有効な運動の本質を明らかにするための鍵となる研究成果を報告した.この研究では、脳の神経伝達物質であるドーパミンに着目し,ポジトロン断層法(positron emission tomography;PET)を用いて,運動による脳内のドーパミン遊離を検証した.併せて,運動中に認知課題(Go/No-Go課題)を行い,反応の速さを認知パフォーマンスの指標として評価し.脳内のドーパミン遊離と認知課題に対する反応の速さとの関係について検証した.PETを用いた実験から、一過性の有酸素運動により脳内でのドーパミン遊離がみられることを捉え、さらに運動によるドーパミンの遊離と認知課題に対する反応の速さとの間に有意な相関関係があることを明らかにした.次に,運動による認知パフォーマンスの向上を引き起こす要因の解明を試みるために,電気刺激を活用した下肢への骨格筋収縮による不随意運動誘発モデルを用いて,骨格筋の運動(筋収縮)に伴う生理的変化が運動による認知パフォーマンスの向上へ及ぼす影響を検証した.その結果,運動による認知課題に対するパフォーマンスの向上には、骨格筋の収縮に伴う生理的変化だけでは十分とは言い難く、随意運動に伴う脳内の神経活動が必要であることが示唆された。以上のことから、1回の有酸素運動による認知課題に対する反応の速さ、すなわち認知パフォーマンスの向上には脳内でのドーパミンが関係していること、さらに運動による認知パフォーマンスの向上には随意運動に伴う脳内での神経活動が必要であることが明らかになった。