抄録
Offer Organization: 日本学術振興会, System Name: 科学研究費助成事業 特別研究員奨励費, Category: 特別研究員奨励費, Fund Type: -, Overall Grant Amount: - (direct: 1500000, indirect: 0)
本研究は,骨格筋細胞の損傷,再生,肥大といった適応を誘導するそれぞれに特異的な細胞内カルシウムイオン時空間パターンが存在するという仮説を検証することを目的としている.
まず,伸張性収縮による筋損傷過程に着目しin vivoバイオイメージング技法細胞内カルシウム動態の観察を行った.その結果,伸張性収縮中のカルシウムイオン蓄積に引き続き,5時間後においてもカルシウムイオン濃度が高く,さらに部位局所的に蓄積していることが明らかになった.これは,筋損傷の形態的特徴が顕著となる24時間後に先行して生じていた.このカルシウムイオンパターンを形成している要素としてリアノジン受容体に着目したところ,リアノジン受容体を阻害すると5時間後におけるカルシウムイオンの蓄積および24時間後の筋損傷が抑制されることが示された.一方で,伸張性収縮中のカルシウムイオン流入経路である伸展活性化チャネルの阻害は,5時間後におけるカルシウムイオン動態に影響を与えなかった.以上の結果から,伸張性収縮中の伸展活性化チャネルを介したカルシウムイオン流入に引き続き,収縮後もリアノジン受容体からのカルシウムイオン漏出によるカルシウムイオン蓄積パターンが存在し,筋の損傷をもたらしていることが示された.この結果は,2021年9月で行われた体力医学会で発表を行い,2022年1月に国際学術誌へ掲載された.
また,筋が著しい肥大を遂げる発育過程におけるカルシウムイオン動態の観察に試みた.身体の大きさも異なる3,6,12週齢のラットを対象に in vivoバイオイメージング技法によるカルシウムイオン動態観察技法を確立した.さらに生化学的手法から,週齢によって異なるカルシウムイオンハンドリング機構を形成している可能性を示す結果が得られた.