抄録
Offer Organization: Japan Society for the Promotion of Science, System Name: Grants-in-Aid for Scientific Research, Category: Grant-in-Aid for Scientific Research (C), Fund Type: -, Overall Grant Amount: - (direct: 3600000, indirect: 1080000)
「超固体」とは、結晶のように空間的な周期構造を持ちつつ、その周期構造は不動のまま超流動流が流れることのできるような状態を言う。このような状態が2019年に原子気体のボース・アインシュタイン凝縮体において実現された。本研究の目的は、これを多成分のボース・アインシュタイン凝縮体に拡張することである。
今年度の研究では超固体状態の多成分系への拡張という点で大きな進展があった。スピン自由度を持つ原子のボース・アインシュタイン凝縮体は多成分系である。従来、ボース・アインシュタイン凝縮体の液滴状態はスピン自由度が外部磁場によって凍結された状態、すなわち一成分系がこれまで考えられてきた。これに対して、本研究では外部磁場が非常に弱くスピン自由度を保った系を考察した。さらに原子が持つ磁性による相互作用が、その他の相互作用よりも強く支配的な場合を考えた。これは近年わが国で初めて実現されたユーロピウム原子のボース・アインシュタイン凝縮体がこれに相当する。
数値的または解析的な研究により、基底状態はドーナツ型の液滴状態であることを明らかにした。これはドーナツの輪に沿って磁化が循環した状態となっており磁気渦と呼ばれている。このような磁気渦を持った自己束縛状態が流体で実現できることを見いだしたのはこれが初めてである。さらに、この系をシート上の細長い空間に閉じ込めると、ドーナツ型の液滴状態が周期的に並んだ状態が基底状態であることを明らかにした。この状態は周期性を持ちつつ超流動性も持っており、超固体状態であると言える。従来のように単純な形の液滴が並んでいるのではなく、磁気渦という構造を持った液滴が並んでいる極めて新奇な超固体状態である。