抄録
Offer Organization: Japan Society for the Promotion of Science, System Name: Grants-in-Aid for Scientific Research, Category: Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory), Fund Type: -, Overall Grant Amount: - (direct: 4700000, indirect: 1410000)
本研究は、言葉と音楽の両者に共通した生物学的基盤を検討する上で、リズム制御能力に着目している。特に、その決定的な証拠を示しうるものとして、発話とリズムタッピングの間の干渉現象を網羅的に調査する。そのために、タッピング動作をする効果器(手・足)やその左右による違いと、リズムパターンによる影響の違いをそれぞれ計測する。また、音声の知覚においても同様にリズムタッピングとの干渉が生じるかも調べる。加えて、発話・タッピング・音声知覚に共通して関与する脳メカニズムを調べる。これらを通じて、発話と音声知覚におけるリズム生成機構の関与を明らかにするとともに、吃音や失読症などのリズム生成の問題に起因するとみられる障害の解明や治療法の検討につなげることを狙う。
2024年度は継続的な予備実験と3つの実験(各20名弱)を行った。これらを通じて、干渉現象を計測するのに最適な詳細な実験プロトコルを定めた。その結果、干渉の効果が十分明瞭に観測できることが分かった。手の左右差は明瞭ではないため、効果器による差はないと考えられる。一方で、リズムを伴わないが認知的な負荷が高い課題(統制課題)がタッピングリズムに影響するかも調べたが、これは干渉が生じなかった。これらの結果は、発話とタッピングの干渉現象は中枢性のリズム制御能力の共有により生じるという仮説を支持する。ただし、干渉の程度に個人差が見られた。そのため、調音器官の運動機能、自発発話、音楽の拍に合わせたタッピング、音楽洗練度質問紙など、複数の付加的なテストを行うことで、その要因の探索を開始した。
また、音声知覚の研究についてもタッピングによる干渉効果が生じることが観測されつつある。一方で、吃音との関連を研究する基板として、吃音のある話者の音声データの分析を行い、聴覚フィードバックへの感度が低下していることを見出した。