抄録
Offer Organization: Japan Society for the Promotion of Science, System Name: Grants-in-Aid for Scientific Research, Category: Grant-in-Aid for Scientific Research (C), Fund Type: -, Overall Grant Amount: - (direct: 3300000, indirect: 990000)
体軸方向に体節構造を持つ動物が、どのように体節間を協調させてスムーズな動きを生み出すのかについて明らかにすることを目指して、ショウジョウバエ幼虫の運動制御システムをモデルとして研究を行なっている。前年度に、前進運動時に強く活動する新規介在神経細胞YT1を同定した。今年度はこの細胞を起点として、神経回路の同定及びその機能解析を進めた。各神経分節に数百個ある神経細胞には、その発生系譜に則って名前が付されているが、形態的特徴や位置情報から、YT1細胞がA31c細胞であることが明らかになった。この知見をもとに、コネクトミクス解析を行なったところ、A31c細胞の下流には主要な細胞としてA26f細胞があり、A26fは体壁筋のうち輪状筋を支配する運動神経細胞を神経支配していることが分かった。そこで、前進運動が駆動する際の輪状筋の収縮パターンを遺伝学的な蛍光ラベルを用いて行なった。前進運動は筋収縮が尾端体節から頭端体節にむけてに伝播する時間とその合間の時間から構成されるのだが、輪状筋はこの伝播波と伝播波の間で、全体節で同期して収縮することが明らかになった。そして、興味深いことに、A31c細胞やA26f細胞の神経活動を操作することで、この輪状筋の収縮及び、前進運動の速度が変化することが明らかになった。このことは、体軸上を筋収縮を伝播させて運動する動物が、伝播波と伝播波の間の時間に輪状筋を同期的に収縮させて時間差を調整することで、運動速度の調節を行なうという新しい運動制御機構を示唆する。